Mad starting!!

※これはこちらの作品→【デュラララ!!】軍服パロ | 静岡おでん http://p.tl/i/10213940
を見てたぎった櫻井が勝手にやっちゃったものです。色々関係ありません。





 穏やかな日常なんてものは、長続きしない。今日も一つ、明日もまた一つ、日常は瞬く間に崩れて闇に堕ちていく。
 それは、非日常を日常にしてしまった人間だとて同じこと。それが日常のサイクルに溶け込んだ辺りで、瓦解する。
 ――そして、そんな瞬間こそ。
「人間って素顔を見せてくれるんだよねぇ。」
 新宿に聳え立つマンションの一室で、折原臨也は目の前に置いた将棋盤の上に駒をばら撒いた。ぶつかり合い、跳ねてバラバラと盤上から駒が落ちていく。その様子に人間を重ねたか、臨也がけらけらと笑った。
「さて、それでは俺が非日常への引導を渡してあげよう。」
 ――ねえ、帝人君。


予告編


 ――その軍隊は、通称「ダラーズ」と呼ばれている。
 「ダラーズ」は本来軍隊を持たない筈の日本に秘密裏に置かれている特殊組織だ。秘密裏とは言っても、名前だけはよく知られている。日本に留まらず、他国でも「ダラーズ」の名前はそれなりに有名だ。
 では、何が秘密裏なのか?いやそもそも何故この国にそんな組織が存在を許されているのか?
「ま、そりゃそうだよな。」
 そんな「ダラーズ」の一員である門田 京平は1人ごちる。
 ――実体が分からなきゃ潰しも効かねぇ、てか。
 そう。
 「ダラーズ」には、実体がない。名前だけは確かによく通っている。しかし、その創設者、頭、幹部、構成員ですら謎なのだ。ただ隠されているわけではない。何せ構成員の門田自身ですら知らないのだから。
 誰も何も分からないまま、「ダラーズ」と名乗る人間だけが無尽蔵に増え、或いは減っていく。「ダラーズ」は、そういう組織だった。

「ま、差し当たり苦労はしないんだけどね。」
 池袋に居を構える岸谷新羅もそんな「ダラーズ」の1人だった。最も、彼の場合は軍人というよりは軍医といった方が正しい。心得が全くないわけではないにせよ、闘うよりは治す方が本業である。
 新羅は同居人のセルティ・ストゥルルソンに向かって話を続ける。
「言われた通りの人を治してあげれば給料はちゃんと振り込まれるし。一応国家公務員なわけだから、安定している職場ではあるわけだしねぇ。気にはなるけど、触らぬ神に祟りなし。ね、セルティ?」
『お前がそれを言うか?』
 新羅の呼び掛けを受けて、言葉の代わりにPDAが応えた。
 ――セルティ・ストゥルルソンには、首が無い。彼女は人間ではなかった。戸籍の無い彼女は「ダラーズ」に入ってこそいないものの、「首無しライダー」の名前は「ダラーズ」と肩を並べる程の存在だ。
 そして、岸谷新羅はそんな彼女を愛していた。首無し女を愛するような人間の所属する組織というだけで、「ダラーズ」の異質さなど説明するまでもないだろう。
「え、だって俺、常にセルティと毎日を平穏無事に過ごしたいと願ってやまない平和主義者だよ?」
『そこがおかしいと言うんだ。私が関わっている時点で日常とは言えないだろう。』
「そうかな?」
 セルティの言葉に新羅はそう言って、ない顔へ向けて微笑んだ。
「私は、日々常に起こっていることは全て、その内容に関わらず日常だと思うけれど。」


日々常に起き得る日常。
しかし、非日常は常に突然訪れる。
そっと、そっと。
知らぬ間に忍び寄る。


 ――苛々、する。
 夜の池袋。とあるマンションの自室の中で、平和島静雄は手にした軍帽をぐしゃりと握り締めた。
 彼もまた、「ダラーズ」の一員であった。彼は今し方「ダラーズ」の仕事を終えて帰って来たばかりで、着替えていない軍服の漆黒に僅かながら赤い染みを滲ませている。
 ――俺じゃなかったら、やばかった。
 染みが時間と共に大きくなっていくのが目視出来る。その赤は返り血ではない。紛れもなく、彼自身の血液だ。
普段ならば、彼は傷を負うことなどない。負わされる前に問答無用で叩き潰す。彼はそういうタイプであり、そう出来るだけの力を有してもいる。
 だから、この事態は異常だった。背後から真っ直ぐに左胸の付近を刺されたのだ。結果的に仕事が完遂出来たのは彼が規格外に頑丈であったからこそで、もし刺されたのが彼でなければ命を落としていたに違いない。
 問題は、だから。常に秘密裏であるはずの「ダラーズ」の仕事で背後を取られたという、その一点。
 ――誰だ?
 誰かが「ダラーズ」を内部から狙っている。そうとしか考えられない。一体誰が。候補などないにも等しい。そういう組織だ。けれど。
 ――そんなの、あいつに決まってる。
 自分が真っ先に狙われたこととか。やり口とか。雰囲気とか。直感とか。
 そういう様々な彼なりの根拠は、彼に1人の人間を明確に想起させた。
「よし、殺しに行くか。」
 静雄はそう呟いて立ち上がり、着替えはせずに上着を引っ掛ける。そしてまるでコンビニにでも行くような気軽さで、マンションの部屋を出た。
 無論、彼とて軍隊での身内殺しが御法度であることくらい熟知している。しかし、ここまでされて。しかも相手が組織を潰そうと分かっていて、何もしない彼ではない。
 いや、そもそも。
 ――そういうこっちゃ、ねぇんだよ。あいつはっ!
 その相手と静雄は犬猿の仲だった。


非日常は動き出す。
たった1人の行動をきっかけに。
くるり、くるりと。
勢いよく回りだす。


 ――特に問題はないみたい、だけど。
 パソコン画面を見つめながら、竜ヶ峰 帝人は考える。
 ――順調過ぎる気がする、ような。
 帝人は反射的に傍らに置いた一振りの刀を握り締めた。使わないで済むならば。しかし、嫌な胸騒ぎが収まらない。
「『ダラーズ』が壊れることだけは避けないと。」
 帝人は確かめるようにそう声に出して呟いた。
 帝人は現在アパートの自室の中で軍服に身を包み、パソコンを見つめていた。その光景は端から見れば実に不自然極まりないものだったが、彼の正体を知れば自ずと納得するだろう。
 竜ヶ峰 帝人。このいち「ダラーズ」員としか思えないこの少年こそ、「ダラーズ」の創始者にして頭だった。彼はパソコン一台で隊員を管理し、時には刀を持って自ら動く。「ダラーズ」という組織形態を編み出し、日本国家に認められて依頼、彼はずっとそうした生活を送っている。
 これまで、「ダラーズ」は順調に機能してきていた。しかし、いやだからこそ。帝人は不安になり、同時に胸を高鳴らせる。そろそろ、何かが起こるのではないかと。
 ――とにかく、2人に相談してみよう。
 帝人はけたたましい鼓動音を落ち着かせつつ、携帯電話で2人の人間のパーソナルデータを呼び出した。
 紀田 正臣。園原 杏里。
 彼の大切な、信頼出来る友人の名前を。


歯車は共鳴し合う。
共鳴し、更に大きな歯車へと。
小さな非日常は絡まり合う。
そして、大きな事件を形作り始める。


「あーあ、バレちゃったか。」
「バレちゃった、じゃねぇんだよ!イザヤ君よお…!」
 夜の新宿では2人の人間が殺気を放って向かい合っていた。2人とも夜の闇に溶け込む漆黒の軍服を身に纏い、今にも殺し合いを始めそうな鋭い眼光をぶつからせて睨み合っている。
「良いじゃない、死ななかったんだから。」
「殺そうとしたのは認めるんだな?」
「今更じゃないっけ、俺とシズちゃんじゃあさ。」
 平和島静雄。折原臨也。この2人の仲が如何に悪いか、なんていう話は、池袋新宿界隈では既に常識に近い。顔を合わせば大喧嘩。それも只の喧嘩などという甘いものではなく、ナイフは取り出すわ自販機は投げつけるわの有り様なのだから、もうそれは喧嘩というより殺し合いの域だ。
 しかし、それでも殺し合いにはならなかった。今までは。
「でもよお、イザヤ君。手前、今回ばっかりは本気で俺を殺しに来たよなあ?だからよ――」
 今まで殺し合いに発展しなかったのは何故か。それは2人が互いに同じ「ダラーズ」という組織に身を置いていると認識していたからだ。「ダラーズ」は、仲間意識など要らない組織だ。だから2人も、最低限相手を殺さない範囲で憂さを晴らして、この組織に互いが居ることを容認してきた。
 しかし、その均衡は崩れた。臨也が組織を消そうとするならば、静雄にそれを容認する理由などあろう筈もないのだから。
 静雄がすらりと腰の刀を抜いた。
「――今日ここで手前を殺す。全て殺す。死ななくても殺す。死ね。」
「ははっ…本気だねぇシズちゃん。」
 静雄の様子を見て臨也が笑う。臨也は知っていた。目の前の平和島静雄という男が、その名の通り平和と静けさを求めていることを。暴力が嫌いなことを。だから本来、素手で全て収めてしまうことを。殺さない為に。
 だから、刀を抜いた時点で静雄の本気は明白だった。きっと彼が振る刀なら、切っ先が当たっただけでも一瞬で身体を突き抜けるだろう。素手では持ち得ないリーチというアドバンテージ。それをこの男に与えることが如何に危険か。
 臨也も刀を抜き去る。逃げきれるか。どうだろう。
「そりゃあ、ここでお前が消えれば俺は平穏に暮らせんだからなあ。」
「シズちゃんだけじゃないよ。」
 臨也に特に他意はなかった。臨也は自分の言葉が静雄に届いた試しなどないことを分かっていたし、この場面では尚更そうであろうと考えていた。だから、彼は事実を述べただけだ。もう一度言う。臨也に他意はなかった。
 けれど、それでもやっぱり平和島静雄は折原臨也の予想にそぐう人間などではなく――
「みんな、俺が消えたら喜ぶと思うよ。シズちゃんも知ってるだろ?俺ってほら、嫌われ者だから。」
 ま、俺が人間を愛せれば別に全然構わないんだけどね?
 そんな臨也の言葉が届く前に、静雄の刀はその動きを完全に止めていた。


小さな出来事が、歯車を狂わせる。
軋み、悲鳴を上げて暴れ出す。
そして。
ゆっくりと、その姿を現した。
「…どうしたのさ、シズちゃん。」
 ――同情でもしたの。
 臨也は目の前の天敵の様子が変わったことに動揺し、からからに渇いた喉から一言、ぽつりと吐き出した。

「笑えない、よ」




本編なんてないよ。
たぎったら偽予告を作るは私の習性みたいなもんです。
こっそりピクシブに突っ込んであったりする。怒られたら消しますが。
あー軍服萌えるわあ…悶えるううう。
静岡様は神過ぎると思います。漫画の話にしろ私のツボによく嵌る。にこの禿の人(※国)的リスペクトを捧げるです。