フロム・ランガージュ・トゥ・パトス4

静臨中心ですがオールキャラ
サヴァン設定と言いつつ解釈が相変わらず歪んでる
プラスαしただけで基本設定は原作通り
三巻直後くらい?
臨也君の世界が常人と違えばいいなって思っただけ
ただ櫻井が天才萌えなだけだぜ?
流石に刀の精神分析は無茶だった。
以上オッケーな方









 太陽の断末魔が赤く赤く街を照らし出している。眩むような光が路地裏に影を落としていた。池袋が夕闇に染まろうとしている。
 まだ蝉や蟋蟀が鳴く季節ではなかったけれど、少女の頭の中では絶え間なく一つの音が鳴り響き続いていた。しかしそれが――不意に、止まる。
「やあ――君も、来てたんだねえ。」
 少女の気配に気付いたか、男が振り返った。その瞳は燃える太陽と同じ様に深く赤く、人間でも化け物でもない少女の瞳とよく似ていた。少女は止むことのない筈の声が止んだことに以前にも感じた戦慄を覚えながら、口を開く。
「竜ヶ峰君に近付かないで下さい。」
「へえ、何で?」
「もうこれ以上日常が壊れるのは嫌なんです。」
 少女の脳裏に浮かぶ一人の少年。少女は彼が居なくなった原因を知らなかったが、推察することは出来た。例えば、そう――今目の前に居る男なら。人外である妖刀の集団を掌で踊らせて見せた、この男なら。
「紀田君に何かしたのは貴方じゃないですか?」
 男は何も答えない。少女はそんな男を脅すように、右腕からすらりと一本の刀を抜いて見せた。その切っ先をゆっくりと突き付ける。
「やっぱり、あの時愛してしまうべきでした。」
 ――或いは。
 愛さなかったのではなく、愛せなかったのかも知れない。今も、脅しているのではなく、脅すことしか出来ないのかも知れない。
 だから少女は――男に口を開くのを許してしまった。
「日常、ねえ。」
 男は刀を突きつけられても尚何事もないようにしたり顔をして言った。
「君に日常なんてあるのかい?人間でも化け物でもないと自称する君に?」
「――少なくとも、貴方に否定される謂われはありません。壊される謂われも。」
「ははっ…確かにね。」
 少女のなけなしの抵抗を男はあっさりと肯定する。しかしその表情は余裕のある笑みに彩られており、より大きな爆弾を隠し持っていることを伺わせた。
 少女が無言でぐいと右腕を突き出す。刀の切っ先男の喉元まであと数ミリというところまで迫り、それでも男の表情は変わらない。声のトーンにも何一つ変化を見せず、続ける。
「でも、君がどう思おうと世界は君を日常とは見なさないよ。君の存在は間違いなく非日常なんだからね?ということはこうは言えないかな?『君と関わること自体が彼らを非日常に引きずり込む』ってね。だとしたら俺との関わりなんて些細なことさ。違うかい?」
「…私は卑怯な人間ですから。私の為に紀田君や竜ヶ峰君に寄生しているのは認めます。でも」
 少女は漸く刀を男に届かせようとした。それが男の意志によるものだと分かっていたが、このタイミングで振るうしかないと思った。
「宿主を壊そうとしているのは、間違いなく貴方です。」
 喉元を切り裂こうと横薙ぎに一閃された刃は――しかし、空を斬る。
「――俺は人間が好きでねえ。」
 斬撃から逃れた男の声が少女の背後から響いた。少女は振り向きたくとも振り向けない。男の雰囲気がそれを、許さない。
「彼らは全く素晴らしい生き物なんだよ。大通りを歩く彼らも、正臣君も帝人君も、皆全て等しく素晴らしい生き物だ。だから俺は彼らの全てが見たい。単なる好奇心だよ。それこそ君に何か言われる謂われはない。それにさあ」
 続く言葉は、少女に言われたものではなかった。
「俺は君に斬られてやる程弱くないから。」
 その言葉が終わった瞬間、呪縛が解けたかのように振り向く少女。しかし、そこに既に男の姿はなかった。
 刀を右腕に仕舞いながら少女は、再び響き始めた音に耳を傾ける。愛してる、愛してると人間に対する絶え間ない愛を囁き続ける刀。かの平和島静雄をも特に素晴らしい人間だとして愛するこの刀が愛せない理由は、強いか弱いかの問題なのだろうか。
 少女は人間でも化け物でもないと自分を評価する。ならば、あの男は――
「――化け物だ。」
 少女には、あの男の見ている世界が、分からない。




杏里編改め罪歌編でした。これで、第一部の臨也君+誰かは終わりになります。次は一部のまとめと二部への転換!
今回は喋っているのは杏里なのですが、ポイントは最初と最後の罪歌。罪歌も結構難しかったです。化け物の思考を私にどう分析しろというのか…。
それと今回の臨也君の人間愛台詞はFLTPのFL(フロム・ランガージュ)を意識したつもり。伝わらねえ。