フロム・ランガージュ・トゥ・パトス2

静臨中心ですがオールキャラ
サヴァン設定と言いつつ解釈が相変わらず歪んでる
プラスαしただけで基本設定は原作通り
三巻直後くらい?
臨也君の世界が常人と違えばいいなって思っただけ
ただ櫻井が天才萌えなだけだぜ?
シズちゃんのターンにしたら設定の意味が吹っ飛んだ
以上オッケーな方









 平和島静雄は池袋という街が好きだ。少なくとも、嫌いではない。嫌いだったらこんなに長く居ようとは思わなかっただろうが。
 言うまでもなく――平穏や静かという言葉は繁華街である池袋には似合わない言葉だ。だからその点に於いては静雄の望みはこの街ではなく郊外にあるのだけれども、それでもこの街に居続けるのにはそれなりの理由があるのであり、そう思わせる魅力が間違いなくこの街にはあった。
 一つには、仕事。静雄は上司の姿を思い浮かべた。田中トムという名前のその上司兼先輩に静雄が受けた恩は計り知れない。彼が居なかったら、自分は今頃どうなっていたことか。考えるだけで底の見えない沼に突き落とされたような気分になる。だから、彼が池袋に居て今の危険な仕事をする限りは、自分は自分に出来る精一杯の恩返しをしたいし、せねばならないのだと静雄は思っていた。
 一つには、家族。静雄には平和島幽と言う大切な弟がいる。幽は、自慢ではないが本当に良い弟だった。自分でも嫌になるくらい普通ではない静雄に対し、幽はどこまでも普通に接してくれる。今でもだ。バイトをしては首にされていた時期も、あまつさえ心配すらしてくれた。そんな幽には別の顔がある。俳優の羽島幽平は誰あろう幽のことだ。彼が羽島幽平として仕事をし、都会にいるのならば、静雄はここを離れるつもりはない。
 そして最後に、街自体の空気。
 平和島静雄は、普通ではない。そんな事は自分が一番理解している。自分が化け物であることなど自分が一番分かっている。分かっているからこそ――嫌いだった。自分が嫌いで仕方なかった。自分が怖くて仕方なかった。このまま自分は誰からも受け入れられずに独りで生涯を終えるのだと思っていた。それが化け物に生まれてしまった自分の宿命なのだと。
 しかし、この街は違った。首無しライダーですらも分子の一つでしかないこの街では、静雄も異分子などではなかったのだ。時間と共に街は平和島静雄という存在に慣れ、受容した。今や静雄は池袋という街の一部に過ぎない。静雄の強さですらも、街に日々現れては消える大量の情報や人間に埋もれて消えていく。消えていってくれる。
 だから、静雄はこの街が好きだった。自分を人間で居させてくれる、この街が好きだった。――ただ一点を除いては。
 但しその一点は池袋に非があるわけではない。非は全面的にたった1人の人間にあり、故に静雄は今日もその人間をこの世から抹消する為に池袋の街を疾走する。

「なんで池袋にいるのかなあ?イザヤ君よお…」
「シズちゃんに会いに来たわけではないことだけは確かだよ。」
 ナイフが陽光に煌めく。静雄は迷うことなく自販機に手を掛けた。
 平和島静雄は折原臨也が嫌いだった。理由なんてもうどうでもいい。嫌いなものは嫌いだ。そのよく動く口も何を考えているのかさっぱり分からない頭も自分を化け物と言うところも、全て全てが静雄の琴線に触れた。静雄が生きるのに苦心してきた世界のことを、全て分かっているのだと見下すような態度はいつだって静雄の怒りを誘発する。
「手前さえいなきゃ俺は平穏に過ごしてられんだよ。だからよ、消えてくれねえかなあ、ノミ蟲よお!」
 自販機が地に落ちる派手な音が通りに響く。数人が振り返り、振り返ってはいつものこととまた彼らの日常に戻っていく。そう。池袋はそういう街だった。この男だけだ。この男だけが自分を異分子扱いする。だから。
 ――こいつさえ、いなければ。
「平穏なんて、似合わない言葉。」
「手前がそうさせてんだよ。」
「まさかあ。」
 自販機の飛来から身を避けて見せた臨也は、嫌な笑いを浮かべて喋り続ける。
「まさかだよ、シズちゃん。君が平穏になんてなれるわけないのさ。だって君は他の誰とも違う。そんな君が日常だって?笑わせるなよ、化け物。だから俺は君が嫌いなんだ。」
「ああそうかよ。俺はそんな手前が大っ嫌いだけどなあ!」
 それ以上喋らせまいと、側の街灯を引き抜いてフルスイングも、やはり臨也はひらりとそれをかわしてしまったようだった。
 凶悪な破壊による粉塵が収まった頃にはあの苛立たしい笑顔も黒コートも見当たらなかったのだから、そういうことだ。
 静雄は街灯から手を離し、小さく舌打ちした。
「相変わらずわけ分からねぇことばっかり言いやがってあのノミ蟲野郎…」
 平和島静雄も、折原臨也も、結局のところは他と変わらぬ普通の人間。
 それが、池袋という街で静雄が学んだ真実だった。臨也は毎回否定するのだが。





シズちゃん視点が思ったより難しかった罠。
臨也君がサヴァンだとか見ている世界が違うだとか劣性遺伝だとか、全然興味ないんだろうなあ。
と思って書いた結果、いつもと何も変わらなかった。びっくりだぜ。
次は帝杏かな?